実録・陣取り合戦 ―オトナの修学旅行―

「テメェ、讃岐屋ぁ! 奈良なんかで遊んでんじゃねぇぞぉ!! さっさとどっか行けやぁ!!」
という「〝陣取り戦士〟はツラい目キツい目に遭ってナンボ」的意見の渦巻く中、
「てやんでぇ! テメェらの思い通りになんざ、なってたまっかよぉ!!」
――とは思わなかったですけどね。

最終日のプランを立てるのに、幾つかの制約がありました。
①18時までにスタート地点に戻ってこなくてはならない為、ルート設定上、ギリギリでも14時には大阪を出発していなくてはならない。
②緊急ミッションのクリアに失敗した場合、2時間のペナルティを受ける訳で、①の制約がある以上、少しでも大阪に近い位置にいなければならない。
③名古屋から大阪まで最短時間で移動した上で、未踏の県を踏破しなくてはならない。
さぁ、これらの制約をクリア出来るルートを選ぶとなると、どうしても三重・奈良は外せない。ところが名古屋-大阪を結ぶ関西本線、大阪-奈良・加茂間そこそこ本数はあるものの、そこから先は1時間に1本と極端に本数が少なくなる。
逆算すると、今回のルートがギリギリ精一杯。
仮に『ムーンライトながら』をパスして、横浜からの始発列車(4:54発)に乗ったとしたら、名古屋着が10:57。緊急ミッションがあるから、名古屋待機(先にも行けるが、途中下車しなければならなく、ミッションをクリアしたとしても、次の便まで1時間2時間待たなければ先に進めない)。ミッションをクリアして先に進んで……ホラ、間に合わない。
先を急ぐあまり、本数の多い東海道線に回ったら、最終日に獲得する県はゼロ。それはあまりにも不毛でしょう。あまりにも苦痛でしょう。
なので、今回僕が選んだルート、一見余裕タップリにみえますが、それは余裕がある訳じゃなく、接続が悪い為に時間が空いただけの話です。
同じ接続が悪いんなら、10分遊ぶも1時間遊ぶも同じやん。どうせ乗る電車は同じなんやから。
いやぁ~……この陣取り合戦ルール、よく出来てるわぁ。進みたくても進めない。でも優位に進めるには、ギリギリの乗り継ぎで先に進まないとならない。きっちりストレスとジレンマを与えてくれるルールです。

9:39 奈良到着
長島でりーまんとらべらーさんと別れ、亀山、加茂と乗り継いでの奈良到着です。
本当はもう一本後の便に乗るはずだったのですが、加茂で待ち合わせをしていてくれたので、それに飛び乗った訳です。これで奈良での滞在時間が20分延びました。
奈良スルーも考えたのですが、大阪は何度も行ってるし、大阪から福井や鳥取に進路を向けたところでタイムリミットには間に合いそうもないんで、計画段階から奈良滞在を決めていました。まぁ、大仏様の鼻の穴くらいは覗き込んでやろうと。
罰当たりですね。
古都・奈良らしく寺社を模した旧奈良駅舎は、立入禁止になってましたので遠くから眺めるだけ。こういう駅舎は保存してもらいたいもんです。新駅舎は仮設なのかどうかわかりませんが、何処かにあるのと同じようで〝味〟というものがありません。
駅前のレンタサイクルで自転車を借りました。東大寺くらいは行くつもりでいましたが、歩いて行くには少し遠い。バスで行くには遠回り(何せ巡回バスですから、市内をぐるっと廻る訳です)。だから、駅前にレンタサイクルがあるってわかった時は「これだ!」と思いましたね。
料金体系は時間割じゃなくて日割です。1日乗り回して300円です。
奈良の街を自転車に乗ってスイスイと――スイスイとは行かなかったですね。駅から奈良公園・東大寺へは上り坂です。それでも漕いで15分もかかったでしょうか。
奈良公園に入ると、早速鹿が寄ってきます。よく躾けられたもんで、鹿せんべい売りのおばちゃんの傍らで、誰かが買ってくれるのを待ってるんです。誰かがせんべいを買ってくれたら、速攻で頂く算段です。それまではピクリとも動きません。……誰が躾けたんでしょう。
東大寺南大門には阿吽の仁王立像。造ったのは運慶と快慶でしたっけ。何か、最近は新しい学説が出てるらしいですけど。
記憶をたどりながら、大仏殿へと向かいます。
大仏様――圧巻です。荘厳です。言葉がありません。
大仏様の周りをぐるりと廻ります。大仏様の背中、巨大な金貨のようです。チャチです。
「イヤン。後ろは見ないで」
柱の一本に、人一人が通れるくらいの大きな穴が開いてます。この穴をくぐり抜けると、厄除けになるとか子供の寝小便癖が治るとか伝えられています。決してデブの穴じゃありません。
「デブでヒゲ生えてたらダメなのかよ!」
う~ん……最近はデブの穴でもいいのかも。

奈良駅と奈良公園の中間辺りに興福寺があります。興福寺には、高校の修学旅行でも来た事がありませんでした。
黒の美術とでもいうんですかね、五重塔をはじめとする伽藍全体が沈んだ色調にまとめられています。天平文化の特徴なんでしょうか。白壁や朱が入ってくるのは、唯一、南円堂だけでしたね。
境内全体が、今、復元工事の真最中でした。工事が終わった後、またじっくり見てみたいものです。

上り坂があれば下り坂もある。帰りは一度も漕ぐ事なく戻って来れました――いや、それはオーバーですけど。
もう一つのプランとして、11時には奈良を切り上げて、大阪に移動してミッション待機ってのも考えてたんですが、奈良滞在を延ばして正解だったですね。1時間ぽっちじゃ足りなかったでしょう。この〝観光欠乏症〟を克服するには。
駅前のインターネットカフェに陣取ります。ここのシステムとして、会員とビジターとに分かれるんですが、何故かビジターはパソコンが使えない。ネットカフェなのにネットが使えないビジターというシステムに、何か意味があるのか? それって、ただのマンガ喫茶じゃん。
まぁそんな訳で、ネットが使えないんじゃ意味がないんで、会員登録して、ネット席着いて、携帯のバッテリーも充電させ、いよいよ2回目の緊急ミッションです。
今回の出題は――

【1】自分の一番愛する人へ200文字以上500文字以内でラブレターを書きなさい。
【2】マッチ5本を使ってほぼ同じ大きさの正方形を2個つくる方法を書きなさい。
   但し、マッチを折ったり傷つけてはいけません。
【3】マッチ4本を使って正方形を5個つくる方法を書きなさい。
   但し、マッチを折ったり傷つけてはいけません。

うへ。
ラブレターとマッチ棒パズルとな。マッチ棒パズルはいいけど、ラブレターって何?
「これなら意表を突けるだろう」って……いや、確かに不意を突かれましたけどね、「びっくりした」ってより「呆れて物が言えない」って方が先に立って……
こんな問題を真剣に考えた久保プロデューサーに頭が下がります。
敬意を表してじゃありませんよ。顔を上げる気力もないって意味ですよ。
まぁ、助かるのは、今回は久保Pからの回答待ちじゃないって事。答えたら即移動可って事。
マッチ棒パズルは案外サクッと解けました。これも昔、弓月光のマンガを読んでたから?(『ボクの初体験』だっけ? Oh! My sun near her gey girl!! Make so!!)
残るは難関のラブレターだ。恥ずかしさにはほっ被りして、さぁ、書きましょう書きましょう。
ここはホレ、昔取った杵柄。すれっからしのスキルを搾り出して、サクサク書いて行きましょう。
どうせね、独り者ですから。「自分の一番愛する人」ったって、母親くらいしか浮かばないですよ。でも……母親相手に書いて、それってラブレターって言えるの?

……一応書いてはみたものの、読み返すとどうにもこっ恥ずかしい。全消去。んで、書き直し。
そんな事を何回か繰り返して。
そして、持病が出る。
僕、短編が書けないんです。
その昔、専門学校時代。文学の授業で
「何か一つ小説を書きなさい。枚数に制限はありません。1行でもかまいません」
という課題が出た。テストの点数に、その作品の評価を加味して成績を決める、というもの。
でも、フタを開けてみれば提出したのは僕だけ。当然、評価対象ではなくなった。そりゃあそうだ、たった一人しか提出してないんだから。
おまけに、その作品というのが400字詰原稿用紙にして100枚強。
「何枚でもいいとは言ったが、コレは多過ぎ」
結局、その作品は授業の手を離れ、何故か校内誌に連載される羽目になったのでした。
――そんな事はどうでもいいや。
その〝長編病〟が、ここへ来て再発。書き上がった文の文字数は、優に1,000字を超えている。
いけません、いけません。規定は「200字以上500字以内」なんだから。半分以上に減らさなきゃ。
それからは、あーでもないこーでもないを繰り返しながら、アレを削りコレを削りして、ようやく形になったものをアップしたのが13:20。
携帯も充電完了! さぁ、出発しましょう!!

13:41 奈良発
自転車も返して、大阪行き大和路快速に乗ります。目指すは通天閣のお膝元・新今宮。
ラブレターなんて課題がもう少し手こずらなければ、和歌山県4,700ポイントを狙えたかもしれない。
(「奈良で遊ばなけりゃ、確実にゲット出来たでしょ」という声は、この際無視します。だって遊びたかったんだも~ん♪)
でも……まぁいいや。人間、欲張ったらいい事ないもんね。大きなつづら背負ってフラフラするよりは、小さなつづら程度が一番いいのよ。
御当地名産・柿の葉寿司を頬張りながら、この3日間でやっと旅らしい旅が出来た今日を振り返って。
さぁ、長い長い45時間も、残すは18時のゴールに間に合わせる事だけです。

あと一息。

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