宇高航路、一転存続へ

3月26日をもって航路廃止を表明していた宇高国道フェリーですが、利用客や関係自治体からの運行継続の要望が相次いだ事を受け、「自助努力で何とかなるのなら続けたい」と、四国運輸局に出していた廃止申請の取り下げ願を提出。これが受理されました。
これにより、当面はフェリー運航が続けられる事になりました。
残る1社――四国フェリーは、「宇野高松間地域交通連絡協議会の議論を十分に見極めて判断したい」と、即答は避けました。

元々は、重油高騰と高速道路の休日千円割引の影響を受け、利用者が激減した事が、経営を圧迫していたのですが、それでも何とか運航を続けていたのでした。
ところが、政権与党となった民主党が「高速道路無料化」政策をゴリ押しした為、「休日だけならまだしも、平日までとなると、とてもじゃないがやっていけない」と、2社とも航路廃止を表明したのでした。
で。
いざ廃止となると、「廃止は困る」「何とか運航継続は出来ないのか」という声が予想以上に多く、国道フェリーでは、その声に応える形での存続を決めたのだとか。
但し、これも時限的な存続でして。
既存高速道路や瀬戸大橋などの新通行料金発表が見込まれる6月以降は、運航を継続するかどうか再度検討し、場合によっては廃止もあり得るとの事。
また、稼動するフェリー船は現行の3隻から2隻に、便数も現行22便から十数便に減らしての運航になる見通し。便数が減る事で、従業員の大幅リストラは避けられない模様です。

利用者からは「便数が減るのは仕方ないにしても、今迄通りの24時間運航をお願いしたい」という声が多く、従業員からは「明確な指針が見えないのに、どうして継続を決めたのか。決めるにしても、時期尚早ではないのか」という不安の声が聞かれます。
雇用継続の有無がかかっているだけに、従業員の不安はもっともだと思います。
その不安というか疑問は、一方の四国フェリーからも聞かれます。
国道フェリーの判断に「協議会で方向性が出ていない状況なのに、軽々しく結論を出すのは、利用者の不安を招くだけだ」と困惑気味。
航路継続については、「航路廃止は、経営がギリギリの状態での苦渋の判断だった。運行を続けたい気持ちはあるが、現状のままでは難しい」と、連絡協議会の結果を見据えてから判断を出す事に。

どちらが悪いとは言い切れないんですよね。
「たとえ経営的に苦しくても、利用者の声に応えたい」とする国道フェリーの気持ちもわかりますし、「同じ継続するなら、長期的に続けられる状況でないと意味がない」とする四国フェリーの考えもわかります。
悪いのは無策な国の方。
いわば〝国による廃業〟という状況を作っておきながら、まるで他人事のような政府の方。
国道フェリーが当面の運航継続の意思を示した事に対し、前原国交相は「喜ばしい事」としながらも、関係自治体が求める補助金による支援に対しては、「離島航路でない航路に赤字補填する制度はない。今後もその考えはない」と繰り返すだけ。
「存続できるよう努力していきたい」と語っておきながら、国が連絡協議会に示した案は、すべて廃止前提のもの。
表では航路存続に期待するような事を言っておきながら、裏では廃止へ向けて着々と詰んで行く。
こうなってくると、国が何を言ってこようと、まったく信用が出来ないじゃないですか。

航路存続を求めるのには、それなりの理由があるんです。
たとえば――
瀬戸大橋には、「風速15mを超すと二輪車は通行止め、車は50㎞の速度規制。25m以上が予想される場合、全面通行止め」という風速規制があります。こうした気象条件や事故によって通行止めとなった場合、代替交通機関としてフェリーが活用されています。
事実、春先などはしょっちゅう通行止めとなるんですよ。
当然、これらの規制は、兵庫県明石と徳島県鳴門を結ぶ神戸淡路鳴門自動車道(明石海峡大橋と鳴門大橋)にも適用される訳で。
もしフェリー航路が廃止されてしまったら、瀬戸内海を渡る手段はなくなってしまうんです。
また、将来予想される南海大地震などの大規模災害時の海上輸送ルートを確保する上でも、フェリーは重要な立場にあるのです。
そういう状況下でフェリー航路がなくなると、四国はまったくの〝陸の孤島〟となってしまう訳です。
利用者側としても利点があります。
わずか1時間程度の船旅といえど、ハンドルを握らずに休めるというのは、長距離運転を強いられるトラックドライバーにとっては(まぁ、長距離ドライバーに限った話じゃないですが)非常に助かるんです。船内には売店や入浴施設もありますからね。まさに〝海に浮かぶオアシス〟な訳です。
これらを考慮しても、いくら「離島航路じゃない」からといって、国が安易に「ハイ、廃止にします」と言っていいものかどうか。「参入廃止を自由化した手前、残ってくれとは言えない」というのが建前らしいのですが、そういう事を言ってる場合じゃないと思うんですけどね。
まして宇高航路は、国道フェリーがわざわざ「国道」を名乗っている事でもわかるように、国道30号線の一部になってるんです。
JR各社も、高速無料化に対しては反対・見送りの要望を上げてますしね。
国としては、高速道路だけに特化した交通行政を推し進めるんじゃなく、道路・鉄道・海路のすべてを考慮した上での交通行政を考えて欲しいですね。



ちなみに、ですけど。
騒動の舞台となっているこの宇高航路。〝宇高〟の読みは「うこう」が正しいのですが、国道フェリーでは開業以来「うたか」と読ませています。で、今では利用者の方も「うこうこうろ」よりも「うたかこうろ」と呼ぶ人の方が主流に。
それだけの影響を与え、親しまれてきた宇野-高松間のフェリー航路。このまま消えてしまうのは、心情的には寂しい限りですし、災害時の事を考えると絶対に存続させるべきだと思いますが、いかがでしょう?



3/11追記

四国フェリーも、航路廃止届を取り下げたそうです。
しかも、国道フェリーは「当面6月まで」としたのに対し、四国フェリーは「少なくとも来年3月まで」と打ち出しています。
また、国と自治体が、宇高航路存続に向けた社会実験を実施する事で合意しました。ただ、実験内容がどんなものか、国と自治体のどちらが主体となって実施するか等は、これからの協議に任せる事に。
香川県トラック協会が運送事業者を対象に実施したアンケートでは、約76%が「公的資金を投入してでも存続させるべき」と答えています。その理由の半数以上が「瀬戸大橋が通行止めとなった時の代替手段がなくなる」というものでした。
やっぱりね。利用者はみんなそう思ってるんだよ。

この記事へのコメント

2010年03月16日 20:21
宇高航路廃止撤廃、喜ばしい限りです~(^o^)
宇高フェリー好きの私としては、期限なんか設けず、未来永劫残って欲しいですねー!
私がもし、名だたる超ウルトラスーパー大金持ちだったなら、この2社に億単位の援助も惜しみませんねー!!
その位、宇高フェリーは好きなんですよ~(^-^)
中でも、四国フェリーに乗った時に流れる社歌を聴くのが、私のマニアックな楽しみのひとつなんです~♪

何はともあれ讃岐屋さん、お互い四国に渡る事があったら、この2社に僅かながらでも貢献しましょうねーっ!!
讃岐屋
2010年03月19日 23:11
ナルホド、泉さんは四国フェリー派でしたか。
ワタクシは国道フェリー派でした。
国道フェリーは、出航の時にドラが鳴るだけで静かなもんでしたよ。

あ。
でも。
ジャンボフェリーの出航と到着の時に流れるCMソングは、密かにハマってました(笑) 歌詞を覚えるより先に、乗る機会がなくなっちゃいましたけど。
……覚えて何しようってんでしょ(爆)

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