彩の国のらり旅~行田ローカルフード攻略戦

時計は午後2時をまわりました。
「さぁ隊長、これからどこへ行きます?」
だ~から、誰が隊長やっちゅうねん。して、何の隊やねん。
……まぁ、〝かすかべ防衛隊〟ではない事は確かです。

ワタクシ、漠然とではありますが、川越の他に行きたい所が2ヶ所ございまして。
大宮の鉄道博物館……を訪ねるには、あまりに時間が中途半端だ。アソコは数時間チョロッと立ち寄るよりは、半日なり一日なりかけて回らないと。
つーか、野郎ばっかりならともかく、今回はS子さんもいますからね。彼女が〝鉄子さん〟でもない限り、退屈極まりないでしょう。
という訳で。

     「れっつごぉ、行田しちぃ~」
     「おぉ! ますます豚一家ですね」

いや、だからってスッポンに手を出すつもりはありませんから。手ぇベッタベタにするつもりはありませんから。
あと、まむしもごめんです――て、あそこは群馬でしたね。

行田には、2つの謎の食べ物があります。 
ひとつは「フライ」というもの。正しくは「フライ焼き」というらしいです。漢字で書くと「富来」。
フライといっても、エビフライやカキフライのようにパン粉をまぶして油で揚げる、あのフライではありません。
……フライを……焼くぅ???
いや、だから、あのフライを頭に描いてると、まったくもってこんがらがってしまいます。まったく別物と考えましょう。
とはいえ……やっぱり頭に浮かんでくるのは、あのサクサクの衣が付いたフライなのです。
そして、もうひとつはゼリーフライ。
……ゼリーをフライにするぅ???
そんな事したら、一口噛んだ瞬間に口の傍がベッタベタになっちゃいますよ?
まぁ、世の中には冷たいアイスクリームを天麩羅にする店もある事だし、ぷるぷるのゼリーをフライにするような、変わったメニューがあってもおかしくないんだろうな――なぁんて考えちゃった人、ご苦労さま。
これもまったく似て非なるモノらしいのですよ。
という訳で、その謎を探るべく――つーか、向ってる本人たちは、それが何なのかわかって向ってるんですが――我々は埼玉県北部に位置する行田市に足を踏み入れたのでした。

「あ! ありましたよ! 今、〝ゼリーフライ〟って書いた幟が!」
「おぉ! 本当にあるんだぁ……。して、何気に有名なんだぁ……」
街角に見つけた幟に色めき立つ車内。――ったく、何がそんなに嬉しいんだか(笑)
ハンドルを市街地方向に切り、水城公園の畔を通る市道を走らせていると……
「あ! あった! 看板に〝ゼリーフライ〟って」
車を止め、住宅街に続く道の方を振り向くと、まるで公園内の売店のような店が。
確かに「ゼリーフライ」の幟が掲げられてますし、屋根にも「ゼリーフライ」の文字があります。
ゼリーフライ、はっけ~ん!
画像画像













ゼリーフライの正体ですが。
おからとジャガイモを混ぜて作ったコロッケのような食べ物です。ただ、コロッケと違って衣が付いておらず、そのまま素揚げにしてあるのです。それをウスターソースのようなシャバシャバしたソースの中をくぐらせて完成。
1個60円也。
決してバカみたく美味しいという訳じゃなく、かといって不味い訳でもなく。割り箸一本ブッ刺しただけの姿といい、その値段といい、なんか祭りの縁日や駄菓子屋で普通に売ってそうなイメージ。ジャンクフードの典型ですな。
学校帰りの小学生あたりが、百円玉握りしめて

     「おばちゃん、ゼリーフライちょうだい!」
     「学校帰りに買い食いしちゃダメって、先生に言われなかったかい?」

なんてお小言もらいながら、差し出されたゼリーフライをハフハフ頬張ってる光景が目に浮かびますね。
ちなみに、この〝ゼリーフライ〟という名前、由来は諸説あるようですが、一番オーソドックスなものとして、小判のような形をしているので〝銭(ぜに)フライ〟と呼ばれていたものが訛って〝ゼリーフライ〟となったんだとか。
銭フライ → ゼニーフライ → ゼリーフライ……といったトコ?
……進む方向がジェニー方面じゃなくてよかった。ソッチ方面に進んでたら、オカマのジェニーちゃんがイメージキャラクターになってるトコでした(笑)
それにしても。
わざわざコレだけの為に、遠くからはるばる来るほどでもないなぁ(爆)

さぁ、「ゼリーフライ」は制覇しました。次なるターゲットは「フライ」です。
ところが、目指す古沢商店が見つかりません。どころか、そこへたどり着くための道すら見つかりません。
路地から路地、ぐるぐると車を走らせ、血眼になって探しまわるも、それらしい気配すらない。
車内が「もういい加減あきらめて引き返そうか」という雰囲気になりかけたその時、Y隊員が

     「仕方がない。秘密兵器を出します」
     「秘密兵器?」

そう言ってトランクから取り出したのは、ネットブックパソコンとPSPにつないだGPS。
古沢商店の細かい地番までネット検索をして、その地図と現在地とを見比べて……

     「この道、バックですね」

探索の結果、ほんのすぐそこだという事で、何度も行き来した道をもう一回辿って。

     「目標は渡辺酒店。その角を右です」
     「……あ!? この道かぁ?」
     「え!? いやいやいや、こぉれは見過ごすって」

そこは、車1台がやっと通れるかという一方通行の道。何なら駐車場入口と云っても過言ではない。
ところが、その先を進むと、いきなり道幅が広くなるんです。

     「うわ、こぉれは卑怯だわ」
     「あ! 隊長、ありましたよ! 古沢商店!」
     「何!? でかしたぞ、Y隊員!」

……すっかり「隊長」「隊員」で定着しちゃいましたな(笑)
目印ともなる赤い日除け。入口の壁には『フライ やきそば 古沢商店』の文字が。
間違いありません、ここがフライ発祥の地・古沢商店さんです。
店内に入ると、〝雑貨屋〟とか〝乾物屋〟といった言葉がピッタリくるような、トイレットペーパーやら缶ジュースやらが山積みにされています。そして、店の真ん中と壁際をぐるり囲むように並べられたテーブル。
そのテーブルというのが――

     「がはははは、懐かしいべ?」

店の兄ちゃん(なのか、ただの常連さんなのか?)が言うとおり、昔懐かしいスペースインベーダーの台。それにテーブルクロスを掛けてあるだけなのです。
そして、店内狭しと並べられている写真パネル。この店を訪れた有名人の写真です。
ホンジャマカ石ちゃんとTBS安住アナ。氷川きよしとヨネスケ――もぉこのメンツだけで、何の番組のロケで来たか丸わかりですが――もちろん、豚一家の写真も。
「フライ」が焼き上がるまでの間、兄ちゃん、その一つ一つについて解説してくれます。
これだけ詳しいってのは……やっぱり店の関係者? 会話の内容から、どうやら青年会の人らしいのですが。
画像画像













さて、肝心の「フライ」ですが。
鉄板の上で、クレープ状に薄く延ばした生地に、豚バラ肉、刻みねぎ、桜エビ、卵などの具材をはさんで焼いたもの。外はカリッとしてるのに中はフワッとしてます。
お好み焼きと言われればお好み焼きっぽいのですが、お好み焼きのように生地と混ぜ込んである訳じゃありません。それに、お好み焼きほどの厚さはありません。なのに、お好み焼き並にもっちもちの生地。山芋なんかの「つなぎ」を使ってるんでもなく、ただ小麦粉を溶いてあるだけなんですけどね。

味は醤油かソースかを選べます。
すンごい素朴なのに、クセになる味。も、何枚でもイケちゃいそうです。
だからって、ホントに何枚も食べると、腹ぶっちゃけますけど。そんな芸当が出来るのは、ホンジャマカ石ちゃんだけです。まさに「まいう~」な味でございました。

値段はサイズで決まってまして、小が200円。中が300円。大が400円。
この値段設定からして、子供のおやつ価格ですよね。
まぁ、元々が農家の子供たちや足袋工場で働く女工さんのおやつだったって話だから、あながち間違いでもないんですけどね。
元々、行田の各家庭で、おやつにフライパンで焼いていたので「フライ焼き」と呼んでいたのが、この名前の由来だそうです。それに「富が来る」という願いも込めて「富来」という字を当てるようになったとか。
確かに家庭でも焼けそうな感じはしますが、この味は出せないでしょうねぇ。
さすが創業87年の技とでも申しましょうか――て、何だこの微妙な歴史は?(笑)

     「隊長、大当たりでしたね」
     「うん、大当たりだった」
     「いやぁ~、途中であきらめて帰らなくてよかったですわ」
     「でも、おばちゃん、手づかみで焼いてましたよ?」

衛生的に問題? いやいや、どんな雑菌だろうと、鉄板の上で滅菌されるという事で(笑)
あ。問題はそこじゃない?

     「おばちゃん、ヤケドしないんですかね?」
     「熟練の技というか、それがデフォルトなんですね」

それにしても。
フライにしてもゼリーフライにしても、行田を一歩外に出ると、同じ埼玉県人でも「何それ? 聞いた事もない」と言われる、ホントに〝行田オンリーワン〟な食べ物なんですねぇ。
それをわざわざ食べに来る我々も我々ですが(笑)
東京に戻った我々。
S子さんが「東京タワーをじっくり見た事がない」と仰るので、お別れ前にチョット立ち寄る事に。
オレンジ色にライトアップされていて、いい感じに綺麗です。
が。
それらをすべて台無しにする一言が。
「東京タワーって時計付いてないんですね……」
あ、あにょね……札幌テレビ塔ぢゃないんだから……

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック