そんな地名、あったかえ?

突然ですが問題です。
この地名、いったい何と読むでしょう?
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いずもきょう? いずもごう? チョットひねって、いずもざと? 
それじゃあマトモすぎるでしょう? もっとひねってひねって。脳みそが腸捻転起こすくらい(て、脳なんだから腸捻転は起こさねぇだろぉ、なんてツッコミは却下)ギュンギュンにひねって!
……ダメ? 降参?
――と、その前に……ブッブー! 残念、時間切れ~!!
正解は……
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あ・だ・か・え…………
読めるくわっ!!
いやいやいや、当て字にも程があるって。つーか、当て字にもなってねぇって!
でも、本当にそう読む地名が、松江市の東隣・東出雲町にはあるのです。
神話の国・出雲おそるべし(笑)

そもそも何でこんな読み方になったのか、その根拠となるものを探して、ぶらぶら散策しておりますと……ありました。
国道9号線に面して建つ、大きな石造りの鳥居。その奥には、畑の中に鬱蒼と茂る鎮守森と、大社造りの立派な神殿。その周囲には、鎮守森の杉の木に届かんばかりの大幟が何本も翻っています。
ここが〝国引き神話〟にも縁のある阿太加夜(あだかや)神社の社殿です。
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いつ創建されたかは不明ですが、天平5(733)年に完成した『出雲国風土記』にその名が見られ、貞観元(859)年には従五位下の神階が与えられているといいますから、相当歴史のある社である事は間違いないです。

さて、その〝国引き神話〟でありますが――

はるか大昔、八束水臣津野命(ヤツカミズオミヅノミコト)というとても力の強い男神様がおられた。
この神様は、出雲の国がまだ出来たばかりの、とても小さな国だったので、何とか自分の力で広い大きな国に作り直してやろうと考えられた。
周囲を見渡すと、遠く朝鮮・新羅の国に余っていそうな土地があった。命様は早速新羅まで出掛け、この余った土地に大縄を結び付けると、「国来い、国来い」と掛け声を掛けながら引っ張って来られた。やがてその土地が出雲の国の北側にくっ付くと、離れて行かないようにと1本の大きな杭を打ち込み、それに引いてきた縄の端をしっかりと結び付けられた。
それでもまだ狭いので、もっと広くしようと考えられた命様は、北にある北門佐伎国(きたどのさきのくに)と北門良波国(きたどのよなみにくに)から、同じように余っていそうな土地を引いて来られた。
こうしてかなり広くなった出雲の国だが、もう少し広くしようと考えられた命様は、遠く能登の方に余っていそうな土地があったので、それに縄を掛けて引っ張って来られ、これも離れて行かないように大きな杭を打ち込み、その杭に縄を結び付けられた。
こうして出来た土地が島根半島に、打ち込んだ杭がそれぞれ三瓶山と大山に、くくり付けた縄が稲佐の浜と弓ヶ浜になったと云われている。

かくして、方々からたくさんの土地を引いてきて、出雲の国を広げられた命様は「これでやっと国引きを終えた」と言って、「えい!」という叫び声(終了の意味である「終え」とも、喜びの意味である「意恵(おうえ)」とも)とともに大地に杖を差すと、そこから樹木が生い茂り〝意宇(おう)の杜〟になったと云われる。

どぉ~おです、このスケールのバカでかさ(笑)
出雲の土地が狭いから、朝鮮や能登半島から余った土地を引っ張って来たんですって。
それを留めておいた杭が大山になり、縄が弓ヶ浜になったんですって。
いやぁ~、スゴいですねぇ~。さすがに神様はやる事が違う(笑)
ただ、忘れちゃならないのは、こんな荒唐無稽な物語が、ほんの数十年前まではこの国の正史だったって事。
何てったって、僕らの爺ちゃん婆ちゃんや父ちゃん母ちゃんが習った「日本の歴史」は、〝天孫降臨〟がスタートなんですから。石器や貝塚、縄文人なんかコレっぽっちも出てきやしないんですから。
まぁ、どこまで真剣に教え学んできたかまでは知りませんが。
もっとも、この〝国引き神話〟は『古事記』や『日本書紀』には載っておらず、出雲地方だけに伝わる「出雲神話」です。が、「出雲神話」がひいては「日本神話」であり、すなわち「神国日本の正統な歴史」なんですから、国引き神話も日本の歴史という事で……
……まぁいいや。

ともあれ、この八束水臣津野命が国引きの神事を終えた場所がココであり、そこに社を構えて住まわれたのが、国造家の一族である阿太加夜奴志多岐喜比賣命(アダカヤヌシタキギヒメノミコト)である――と、この阿太加夜神社の縁起書にはある訳です。
(たとえ人々が神社を建て、何かを祭神として祀ったとしても、神話の上では「神様が御社を建てられ、そこに住まわれた」事になってますから。古今東西、神話なんてのはそんなもんです)
故に、この神社は阿太加夜姫の名を取って「阿太加夜神社」、地名も「阿太加夜」となり、この一帯は〝意宇の杜〟から名を取って「意宇郡」と称するようになったとか。
……ふ~ん、そんな神社があったんですねぇ~。
畑の中にポツンとあったので、「そんなたいした神社じゃないんだろう、せいぜいがそこの土地神様を祀ってある程度なんだろう」と思っていたら……どうしてどうして。歴史も古く、由緒正しい神社じゃあないですか。

だからって、「阿太加夜」がどうして「出雲郷」と書くようになったかは、結局わからずじまいでしたけどね。

由緒正しいとはいえ、それほど広くもない境内を散策。
言っちゃあ失礼ですが、田舎郷社にしては大きく立派な社殿です。やっぱり出雲神話に関連してるってのが理由にあるんですかね。
大きな本殿の横には、稲荷天神(お狐様)を祀った小さな祠があります。祠といっても、立派な御社ですよ。
で、その裏手にまわってみますれば……
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この穴、お狐様が出入りする穴なんですって。
いろいろ考えますわねぇ~。
その横には、さらに小さな御社が。
ここには、かつて阿太加夜神社(当時は芦高神社)の神主だった松岡兵庫頭が祀られています。
この御仁、慶長13(1608)年、松江城の築城工事で石垣が何度も崩れて怪我人が出たり、人足が物の怪に襲われたりした為、時の領主・堀尾吉晴公から、工事の無事落成の祈祷を依頼され、二夜三日の大祈祷の末、築城工事は無事に落成をみたという事があったそうです。
その効験あらたかな神通力から、死後に神格化され、ここに祀られる事になったんだとか。

神社といえば御神木が付き物。という訳で、こちらにも大きな楠が何本かあるのですが、その根元には、稲藁で作った大蛇が巻きついています。ご丁寧に電球で目玉まで作って。
そこまでリアルを求める必要があるんでしょうか?
そもそも、この神社と大蛇に、何か因果関係はあるんですかね。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の神話は、同じ出雲の話だけどここじゃないし。神様(阿太加夜姫)の使いが大蛇とか?
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境内の奥には、〝国引き神話〟に因んで「国引き」と刻まれた石碑と、門部王(かどべのおおきみ)が詠んだ

飫宇(おう)の海 河原の千鳥 汝(な)が鳴けば 吾が佐保川の 念(おも)ほゆらくに

という『万葉集』にも記された和歌が刻まれた歌碑があります。
門部王は、敏達天皇の孫・百済王の末裔と云われています。生まれた年は定かではありませんが、養老8(724)年頃から出雲国の国司として赴任していたのではないかと伝えられています。
この和歌は、飫宇の海(万葉集の解説書によると、島根の中海の事ではないか?との事)で鳴く千鳥の鳴き声に、遠い京を思い出すという望郷ならぬ「望京」の歌なんだそうです。
歌碑の案内板には、「天武天皇の子・長皇子(ながのみこ)の孫にあたる」と書いてありましたが、どうやらそれは疑わしいものなんだそうです。仮にその説が正しいとするならば、長皇子は30歳より前に孫をもうけた事になってしまうんだとか。て事は……おい、息子は何歳の時に生まれたのよ? 光源氏もビックリ!てな事になりますれば。
それはさておき。
「ん~……結局はホームシックの歌だよね」と身もフタもない事を思ってしまうのですが(笑)

この神社には、一見すると場違いな物がたくさん奉納されています。
それは、船。
別に海運の神様でもなければ、金毘羅さんを祀ってる訳でもありません。
なのにこの居並ぶ船、船、船。
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実はこの船、12年に一度行われる「ホーランエンヤ」というお祭りに使われる船なんです。
この「ホーランエンヤ」、正しくは「松江城山稲荷神社式年神幸祭」といい、松江城内にある城山(じょうざん)稲荷神社の御神霊をこの阿太加夜神社までお運びし、五穀豊穣の祈願をされるという、江戸時代から連綿と受け継がれてきた神事なんだそう。
この御神幸の際、漕ぎ手の「ホーラ」「エンヤ」の掛け声とともに約100隻もの大船団行列が、御神霊を守り、水先案内するという、何とも勇壮で絢爛豪華な船神事で、日本三大船神事の一つに数えられているんだとか。
で、その水先案内をする〝櫂伝馬船〟というのが、ここに置かれている船たちなんだとか。
ふ~ん……
で! その〝三大船神事〟残りの二つはぁ!?

この「ホーランエンヤ」神事、なんと今年がその12年に一度の年に当たるそうで。
行われるのは、5月の16~24日の9日間。
何という運命の巡り合わせなんでしょうか。転勤してきたその年に、こんなイベントに出くわすとは。
いったいどういう祭なのか、こりゃあこの目で確かめるよりないでしょう!
という訳で、ワタクシ、「ホーランエンヤ」を見物する事を心に決めました――忘れてなければね。
あと、休みが合えば、ですけどね。
会社休んでまで見に行く事しないもん。それ以前に、中継とかあるかも。何てったって12年に一度ですから。
……なして12年に一度なん? 干支ひと廻りって事?
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だぁかぁらぁ! 残りの二つは何なのさぁ!?

(安芸宮島の管絃祭と大阪天満の天神祭だそうです)



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