東予20万石の御城下

画像「牛に牽かれて善光寺参り」じゃありませんが、ここはもういっちょ藤堂高虎に導かれて、今治城再訪問と参りましょう。
先の時は、中をじっくり見れませんでしたからね。
あ。モチロン「青春18きっぷ」で。


今治城は別名「吹揚城」と云います。それは、風で砂が吹き上げられて出来た砂浜の上に建てられたからです。そんな軟弱な地盤の上に、高虎が敢えて城を築いたのは、瀬戸内海航路の制海権――交易路として莫大な富をもたらせる経済的意味と、西国大名の交通路を押さえる軍事的重要性――からでした。この辺りは、豊臣秀吉が築いた長浜城に通じるものがありますね。琵琶湖と瀬戸内海という規模の差はありますが。
――などという今治城の沿革については、前の記事で述べましたので、今更ここでウダウダとは書きません。ですが、〝築城の名手〟藤堂高虎が自ら設計した本格的な城郭である事と、お濠に燧(ひうち)灘の海水を引き込んだ〝日本三大水城〟の一つである事だけは念頭に置いていただくとして。


かつて三重に巡らされていたお濠も、今は内濠を残すだけ。城内も本丸天守閣と、二之丸に幾つかの櫓が残るだけです。
今治市の市制60年を記念して、昭和55(1980)年に再建された天守閣は、五重六層の鉄筋コンクリート造り。高虎が伊勢・伊賀に転封になった際、ここ今治から移設したと云われる丹波亀山城の天守閣をモデルに再現しました。ですが、亀山城が層塔型なのに対し再建天守は望楼型と形式が違う上、高虎築城時にはなかった破風や張り出しが設けられています。さらには、現在建てられている場所が本当に天守閣が建っていた場所かも(そもそも、天守閣自体が存在していたかどうかすら)定かじゃない為、史実に基づかない「模擬天守」に分類されます。

1階は管理事務所になっている為、展示室は2階より上の階となります。
2階には、今治城の絵地図や代々の今治藩主が着用した鎧・兜、刀剣、火縄銃などが展示されています。ただし、展示されている鎧兜は、すべて松平(久松)氏時代の物。藤堂氏時代の物は何一つ残されていません。転封の際、一切合財持って行ってしまったって事ですかね。
天守閣に連なる多聞櫓の2階には、今治地方の自然科学資料や瀬戸内海の魚介類の標本などが展示されています。120年に一度しか咲かない竹の花の標本(まぁ、標本な訳ですから、花なのか何なのかわかりゃしませんが)や、ナベヅル等この地方に飛来する渡り鳥の剥製が、整然と(なのか、あるいは雑然となのか)展示されています。他の展示品の方が興味深いのか、あまり足を向ける人はいないみたいですが。
また、反対側の櫓門には、タオル紡績や漆器、造船など今治地方の地場産業について紹介されています。歴史博物館の他に、自然科学博物館という一面も持ち合わせているんですね。
3階には、各種の古文書や朱印状が紹介されています。よく「○○藩○万石」とか言いますが、展示されている朱印状を見ていると、どうやら江戸幕府の将軍が代わる度に更改されていたようです。もっとも、あまり大きな変更はなく、再承認されるだけのようですが。
4階には、今治地方で出土した古代の石器・土器などが展示されています――のはいいんですが、城代家老の墓石が置かれてるのはどうだろう?
また、幕末期に活躍した郷土の画家・沖冠岳の襖絵なども展示されています。
5階には、この今治城の歴史が年表として飾られています。また、全国各地に現存する天守閣の写真や慶応3(1867)年に写された今治城の写真が展示されています。このテの展示は、どこのお城へ行っても同じですね。
最上階は展望台になっていて、来島海峡大橋や遠く広がる燧灘が望めます。かつては高虎も、ここから瀬戸内の海を眺めていたんでしょうか。

天守閣の隣には、吹揚神社という社殿が建っています。市内に散在していた神明宮・八幡宮・厳島明神・夷宮の4つの宮を合祀する目的で、今治城廃城後の明治5(1872)年に建立されたものです。後に、藤堂高虎や久松家の祖神を神格化して奉り、さらに天満宮など諸神社を次々と合祀するようになり、現在に至ります。なので、ここには天照大神をはじめとする種々あらゆる祭神が祭られている訳です。……喧嘩せんのかしら?
見下ろしてみると、なかなかに大きな社殿ですよ。さすが県下一を誇るだけあります。
画像画像














南西に位置するのが、二之丸西隅櫓として建つ山里櫓。市制70年を記念して平成2(1990)年に再建された山里櫓は、山里門と呼ばれる城門を擁し、城下町へと続く南面を警護してしていました。
櫓内は、地元の名士・河野勝一氏が収集・寄贈した武具、古美術品、油絵などが展示されています。
山里櫓とは対角線上の北東角に位置するのが、二之丸東隅櫓として建つ御金櫓です。櫓内には、今治城に関する古写真や絵地図が紹介されています。
御金櫓の周囲には、多くの桜の樹が植えられています。折も折、満開の時期でございますから、〝御陽気な方々〟がたくさんおられました。
画像画像














〝藤堂式城郭〟の特徴の一つに、高石垣と石垣下に張り巡らせた「犬走り」があります。
あの……ホントに犬がワンワン走り回る訳じゃありませんよ。石垣を高く積み上げる為に、地盤を固める目的でされる工夫です。城を攻め込まれた際、敵に足場を与えるという欠点はありますが、それを補って余りある高石垣が難攻度を高めています。
同じく築城の名手に、虎退治で有名な加藤清正がいます。名古屋城に代表される〝加藤式城郭〟は、石垣の傾斜に特徴があります。上へ行くにつれ傾斜が急になる石垣や「武者返し」など、容易に攻め込まれない工夫がなされています。
〝藤堂式〟と〝加藤式〟、どちらが上だったんでしょうね。
画像画像














北西には、鉄御門とそれに連なる多門櫓、二階建ての武具櫓が建っています。今治城の大手門として存在していたもので、築城400年を記念して平成19年秋に再建・公開されました――なんだ、出来てまだ半年しか経ってないぢゃん。
三方を石垣と多門櫓で囲み、厚さ一分(約3㎜)の鉄板で覆った城門を側面に配した枡形を取っています。こういう配置にする事で、城門に押しかける敵の数を制限する事が出来、さらには巡らされた多門櫓から弓や鉄砲を撃ちかける事が出来るなど、容易には攻め込まれない仕組みになっています。
〝藤堂式城郭〟の特徴とも云えるこの枡形門は、ここ今治城で完成を見、江戸城など以後の天下普請で建てられた城郭で多く採用されて行きました。
そういえば、冬に訪れた金沢城石川門も、この桝形門を採用してましたね。その一方、伊賀上野城では見られませんでした。もしかすると、築城時にはあったのかもしれませんが、廃城後の取り壊しでなくなってしまったのかも。
築城当時は、鉄御門の手前、石垣に沿って高麗門という門がありましたが、今回の再建計画では省かれました。
北西角の武具櫓と巡らされた多門櫓の内部は観覧可能です。公開当初は無料(天守閣と山里櫓・御金櫓は入館料200円)でしたが、この4月から有料(天守閣等を含めて300円)になりました――まぁ、維持費と思えば。
画像画像














櫓内部は真新しいだけあって、まだまだ木の香りがしてました。が……中はギャランドゥ……いや、ガランドウでした。
(すまんのぉ~。笑えよぉ~)
「こんな広いスペース、もったいないなぁ。後から展示か何かするんだろうか」と思い、係の人に訊いてみると「倉庫として建てられたので、展示等は出来ないんです」との事。
これだけのスペースが倉庫にしか使われないだなんて……。
だったら、こんなに綺麗に作る必要なかったんじゃないの? どうせなら公民館代わりに、地域の人に貸し出しすりゃいいのに。
唯一城郭らしさが残るのは、鉄砲などを撃ちかける小窓が壁に空いているのと、死角に入った敵兵を攻撃する為の「石落し」が城門の真上に設えてあるくらいでしょうか。




さて。
今治には、今治城の他にもう一つ「お城」が建っています。
それは――
画像
ホントに宮殿でェ~作ってるゥ~♪
焼肉のタレで有名な日本食研の工場です。今治港から東に数キロ離れた、富田貨物港の近くに建っています。道路を挟んだ反対側には富田海浜公園(富田海水浴場)がある、風光明媚な場所なんですが……なしてこんな形にしたかね?
社長も何を考えてるやら。
つーか、重役でも社員でもいいから、誰か止めるヤツぁいなかったんですかね?
「社長! 正気ですか!?」(by ケンドーコバヤシ)
この工場、一般見学が可能ですが、予約が要ります。庭園だけを見学するなら、直接行ってもかまわないみたいですけど。
同じ敷地内には「世界食文化博物館」というのがあります。ここには、日本食研さんの歴史や商品を紹介するコーナーや、レストランが併設されています。また、作ってるのが焼肉のタレだけに、肉は付き物とばかりに「世界ハムソーセージ博物館」なるものまであります。
これらも見学コースの内に入ってるようです(あ。レストランはコース外ですよ)。
ん~……わざわざ予約してまで見に行く価値あんのかねぇ~?
ちなみに、冗談のようですが、そばを通ると間違いなく〝焼肉のタレ〟の匂いがします(笑)

この記事へのコメント

さくらこ
2008年04月22日 18:05
本当に宮殿で作ってたんですねぇ~!ビックリです。今度CMじっくり見てみます。
讃岐屋
2008年04月22日 19:45
僕もあのCMを見て、「CGでしょ?」と思ってたんですが、愛媛出身の後輩から「ホントにありますよ」と聞いて大笑い。
今回、自分の目で確かめて大爆笑!

いやぁ~……ホント、何考えてんでしょね。
テーマパークならまだしも、工場ですからね。
……あ。ある意味「テーマパーク」か(笑)

この記事へのトラックバック