紀州路のらり旅 ―貧乏旗本の三男坊―

例によって例のごとく、昨夜は隠れ家に逃げ込みまして。
日を改めて(ついでに月も改めて)、紀州徳川家の居城・和歌山城を目指して、大阪を出発です。今日は、さほど急いで向かう必要もなく(あまり早く着き過ぎても、どこも開いてませんから)、07:30発の紀州路快速で向かいます。和歌山到着予定は09:02。
昨夜の雨も何処へやら。どピーカンとも云える快晴です。

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徳川吉宗は、幼名を源六(通称〝新之助〟)、元服・任官してよりは松平頼久(のちに頼方)といい、貞享元年(1684年)に紀州藩2代藩主・徳川光貞の三男として生まれました。
古より「長男は家督を継ぐ者。次男は、長男に事あらば代わって家督を継ぐ者」として優遇されてきたのに対し、三男以下はどちらかといえば放任されてきました。加えて吉宗の母は、藩主の妻・側室としては身分があまりに低く(百姓の出という話も)、幼年時代は家老の元で育てられる等かなり冷遇されて育ちました。
元禄10年(1697年)、いわゆる〝お情け〟で5代将軍・徳川綱吉に拝謁。越前国葛野藩3万石の藩主になりますが、宝永2年(1705年)、3代藩主となった長兄・綱教が死去、後を継いだ次兄・頼職と父・光貞も、その年の内に相次いで病死した事から、紀州55万5千石の5代目藩主の座に就きます(この時、将軍綱吉より一字を賜り、吉宗と改名)。
突然降って沸いたような徳川御三家の藩主の座でしたが、内情は幕府から借用していた莫大な借入金と度重なる災害の復旧費用などで、藩財政はかなり逼迫していたようです。吉宗は財政再建に類稀な手腕を発揮し、それが後の『享保の改革』の礎となったと云われています。
享保元年(1716年)、7代将軍・徳川家継が亡くなり、将軍家の血筋が途絶えた事から、家康に一番血筋が近いという理由で、御三家筆頭の尾張家を抑えて8代将軍の座に就きます。
徳川御三家の藩主の子でありながら、身分の差という事で遠ざけられ、出世とは無縁のはずの吉宗でしたが、あれよあれよという間に紀州藩の藩主となり、将軍職にまで登り詰めた事から、御当地の紀州では〝出世の神様〟として崇められる事にも。
「俺は貧乏旗本の三男坊、徳田新之助だ」
という台詞、貧乏旗本かどうかはさて置き、あながちデタラメではなかったという訳です。
お忍びで市井に出没する〝暴れん坊〟ではなかったようですが(笑)


JR和歌山駅から、けやき大通りを真っ直ぐに歩いて15分ほど、NTTの局舎を過ぎると、和歌山城の大きな御堀と石垣にぶち当たります――て、遠いわ。素直にバスで移動すりゃよかった。
来る道すがらの通りは、ナルホドという名前。〝けやき大通り〟は両脇の歩道と中央分離帯に大きな欅の並木が延々と続いてますし、〝やなぎ通り〟は道こそ細いものの両脇に枝垂れ柳が並んでますし。よく「名前だけ」て道はあるんですが、本当に名前どおりの道に出会うと、「はぁ~、ナルホドナルホド」と納得するやら感動するやら。
和歌山城は、こんもりと緑茂る虎伏山という小高い丘に建ち、その威容が虎が地に伏せる様に似ている事から〝虎伏城〟とも呼ばれています。確かに、遠くから見た大天守・小天守・多門櫓が連なる様は、頭をもたげた虎のように見えなくもないです。
一之橋を渡り大手門を抜けると、虎伏の像があります。この銅像は、戦災で焼失した天守閣が昭和33年に再建されたのを祝し、別名に因んで造られたものです。
二之丸御殿跡に広がる庭園を右手に見ながら、本丸へ続く坂を登ります。程なく、廻櫓が張り巡らされた天守群にたどり着きます。
画像ここ和歌山城は、天守閣だけが独立してる訳じゃなく、姫路城のような連立式天守を有しています。そして、それらの天守群は廊下状の廻櫓で結ばれた梯郭式平山城です。三層の大天守は、徳川御三家の居城にしては小さいようにも思えますが、これは幕府に遠慮して(一説には、あまりに大規模な築城計画であった為に謀反の嫌疑がかけられ、中止させられてしまったという話も)、五層の計画をあえて三層に改めたとも云われています。
現在残っている敷地は、最盛期の1/4と云いますから、それはそれは徳川御三家の威容を示す広大な城郭だったのでしょう。そして、なおも拡張する計画があったと云いますから、そりゃあ幕府じゃなくとも中止させたり、謀反の嫌疑をかけたりするってもんです。

天守台から下がった南側には、和歌山公園動物園があります。規模はごく小さなものですが、フラミンゴやサル、ペンギンを中心に約140種の動物たちがいます。
……スンマセン。正直ショボいです。移動動物園かと思っちゃいました。まだレオマワールドの動物園の方が規模が大きいかも。入園無料とはいえ、これはちょっと……
動物園の中を通り抜け、重要文化財にもなっている岡口門から城外へ出ます。ちょうど大手門の反対側になります。
ここから入り組んだ住宅街を抜け、無量光寺というお寺を目指します――て、ここも遠いわ。ここもバス移動にしときゃよかった。
画像ここには、〝首大仏様(おぼとけさま)〟という文字通り首だけの大仏様が鎮座まします。
かつて無量光寺の末寺・大福寺というお寺に、丈六尺の仏像があったのですが火災により焼失。村人からの懇願もあり、二代目は鎌倉の大仏様を目標にと、その御首だけを鋳造し、天保11年(1804年)に開眼供養が営まれました。いずれはその仏体も造らんと願を立てるのですが、世間がそれを許さず、また安政の大地震で伽藍も崩壊し、遂に明治41年(1908年)に大福寺は廃寺。首大仏は、本山である無量光寺に移され、現在に至っているという経緯があります。
村人の懇願で建立されたものの、あまりの経費のかかり様に、首だけで終わらせられた大仏様の心中や、いかばかりでありましょうや。もし完成していたなら、奈良・鎌倉に次ぐ第三の大仏様として有名になっていたでしょう。しかも、時の為政者による発願ではなく、市井の民の発願による稀有な例として。残念。
それでも、今でも「首から上の病に利益あり」とか「呆け封じに利益あり」とかいろいろ云われ続け、多くの人に崇められているそうです――まぁ、首から下がないから、必然的にそうなるわな。
置かれたみかんが物哀しいわぁ。


和歌山を後にいたしまして、海南市に向かいます。
ここには、太平洋を一望にしながら入れる温泉〝紀州黒潮温泉〟があります。今日も真昼間からひとっ風呂浴びてやろうという魂胆です。
まぁ、それでなくとも、ここには地中海風テーマパーク『ポルト・ヨーロッパ』がある事でも知られてますが。
JR海南駅前――あのね……特急だって停まるし、一応リゾートの玄関口だってのに、この廃れ様は何?
駅前にあるのは、タクシー乗り場とバスタッチだけ。そのタクシー乗り場だって、客待ちの車はまばら。バス乗り場付近に待合所らしき建物があるんで近づいてみたら、学習塾と普通のオフィスだった。
おひおひ、いいのか海南市? 通りがかりのメインストリートも、らしい商店街もない、ただの田舎町だぞ。
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ところが『ポルト・ヨーロッパ』を中心とする〝和歌山マリーナシティ〟は、まるで今までの姿がウソのような賑わい。つか、まるっきり別の街が引っ越して来たかのようです。
『ポルト・ヨーロッパ』は、地中海沿岸・南欧の街並をモチーフにしたテーマパークで、フランスの街並・イタリアの港街・スペインの古城を忠実に再現したブロックと、数々のアトラクション満載の遊園地ブロックからなっています。
でも、僕は中には入りません(笑) ゲート前の賑わいを見てるだけでも十分満足しちゃいますし、目的はホラ、あくまで温泉ですから(爆)
『ポルト・ヨーロッパ』前の広場をはさんで、『黒潮市場』という物産市場があります。豪快なマグロ解体ショーを見ながら、豊富な海の幸を安く買えたり、新鮮な魚介類に舌鼓を打つ事が出来る、直売所&飲食街です。
でも、僕はホラ、マグロより温泉ですから(笑)
防波堤は、たくさんの太公望でごった返しています。『黒潮市場』奥の海釣り公園では、日本でここだけのマグロの釣堀があるそうです。
でも、僕は釣りより温泉ですから(しつこい!)
マリーナには、たくさんのヨットやクルーザーが停泊していて、ブルジョアな趣味をお持ちの方々が、爽快そうに出港していきました。
ええい、チクショウ! いつかはクラウン(古ッ!!)
画像お待ンたせしました! 『紀州黒潮温泉』でございまする。こちらのウリは、〝太平洋を見ながら入れる露天風呂〟です。
入湯料1,000円を払って館内へ。

……………………

……ん~、何と云ったらいいんでしょう……
こらぁアレだね。街のスーパー銭湯だね。
中は高温・中温・低温と3つの大浴槽に分かれていて、サウナもあります。その隣にはカーテンで仕切られた小部屋があって、垢すりマッサージが受けられます。
――まんまスーパー銭湯やん。
ウリの露天風呂は……いや、確かに気持ちいいんだけどさぁ……〝太平洋を見ながら〟つーか、マリーナを見ながらでしょう、コレは。しかも、今日みたいなカンカン照りは、長時間入るのには不向きだね。逃げ場ないもの。
のんびりしようにも、向かいの『ポルト・ヨーロッパ』からのBGMが結構やかましい。
う~ん、開放感ってのとはチョット遠いかなぁ。
舐めると確かにほのしょっぱくて、天然温泉(ナトリウム系)だってのは間違いないんだろうけどさ。〝1億年(白亜紀)の地層から届いた太古の湯〟というのが謳い文句らしいんだけど……
昨日の白浜温泉に比べたら、ちょっと拍子抜け。なんかガッカリ。

あ~あ、あンだけ楽しみにしてたのになぁ~……




とは申せ。
当初の目的どおり、温泉三昧できたから、今回の『紀州路のらり旅』は、まずまずだったんじゃないでしょうか。



アレ? 和歌山ラーメン、食ったっけか?(笑)

この記事へのコメント

和歌山見所.NET
2009年03月20日 00:34
初めまして、和歌山見所.NETの管理人をしている如月といいます。和歌山県に関係のあるブログの紹介用の掲示板を始めました。よろしければ一度お越しください。
http://bbs1.sekkaku.net/bbs/wakayama.html

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