実録・陣取り合戦 ―秘密兵器と後遺症―

今回、「軍資金の範囲内でのバス利用可」というルール改正を受け、これを使わない手はないと思ってました。
後は、何処で有効打を放つか。これが問題です。
のっけから深夜バス? いやいや、リスクが大き過ぎる。この軍資金の中から食事代を捻り出さなきゃならない。突発的な何かがあった為に、少しは残しとかなきゃならない。それなのに、いきなり高松-東京間の深夜バス代1万円を捻出したら……名古屋便にしたところで、6,000円近くを支払わなきゃならない。よしんばそれを利用したところで、有効打たりえるかというと、それは疑問。
バスの投入は他チームの度肝を抜いて、自分の活路も拓くものじゃないと――セフティー・バントか?

14:22 JR難波到着
天王寺を過ぎ、住宅街の頭越しに大阪通天閣が見え隠れする。
時刻表に挟み込んだ、秘密兵器の発動キーを再確認する。

ここで。
ついに。
切り札を。
投入いたします。

そうです。僕は、新今宮で降りると難波へ向かう事を宣言します。そこで待ち受ける秘密兵器に、この旅のすべてを賭ける為に。
タイムリミットの18時までに高松に戻り、なおかつ、一旦はあきらめた徳島県4,100ポイントを獲得する有効手段。

     14:45 なんばOCAT発 高松駅前バスターミナル行き 高松エキスプレス19号

大阪から阪神高速を通って、明石海峡大橋を渡り、淡路島を縦断。うず潮渦巻く鳴門海峡を渡り、徳島県を抜け、高松自動車道をひた走りに走り、高松駅前に乗りつける。
これが最後の切り札。僕のセフティー・バント。

大阪環状線・新今宮から盲腸のような支線で一駅、地下に潜ってJR難波駅に到着です。
改札を抜けると、エスカレーターに乗って2階のバスターミナル・OCATへ。
ここから日本各地へ向かうバスが、昼夜の隔てなく出発して行きます。乗り間違えると、何処か訳のわからない――例えば飛騨高山なんてトコに連れて行かれ、一人で陣取り合戦の延長戦を演じる羽目になるのです。
それも魅力! かなり魅力!
……いやいや、冗談じゃありませんって! せっかくここまで来てるのに、ゴールはすぐそこなのに、今からまた何処か別の場所って、そらぁアンタ無茶言うたらあきませんわ。往生しまっせぇ。
なんばOCAT――初めてここへ来た時の事。関空行きのシャトルバスに乗りたかったのですが、場所がよくわからなくて散々迷った挙句(地上だと入り組んでて、よくわからんのです)、バスを断念して、南海電車の特急で向かったという苦い経験があります。その後、なんばの地下街を突き当りまで行くと、難なくたどり着けることが判った時は、拍子抜けしたものです。

14:45、細身のボディーのバスが来ました。通路をはさんで2人掛けシートがずらっと並びます。トイレは一番奥。乗車口脇にはセルフサービスのお茶とコーヒー。大阪からの乗り場はここが最後ですから、隣に誰も座らなければシートを独占できる事になります。案の定、乗客はまばら。
それもそのはず。1時間に3本の高松行きは、朝夕は混雑するものの、日中の便で満席になる事なんて、ほとんどありません――大阪行きは、日中でもそれなりに混むんですけどね。だから、リクライニングなんかも、後ろを気にせず倒し放題です(たとえ後ろに誰か座ってても、隣にずれればいい事ですしね)。
この旅始まって以来の一番豪華なシートです。
それがいけなかった。
バスが阪神高速の入口を通過したのは覚えてるんですが、そこから先の記憶がない。もうすぐ旅が終わる安心感と、乗り慣れてるバス、そしてこのシートの心地よさに、すっかり眠りこけてしまったんですね。
目が覚めたのは、大きな橋を渡っている最中。「あぁ、明石大橋渡ってるぅ」と思っていた僕の目に飛び込んできたのは『徳島県』の文字。
……え? えぇ? ぇぇぇええええぇぇぇぇぇ――――!?
と、と、徳島ぁ!?
徳島……鳴門……淡路……そう、淡路島! 休憩は? ノンストップ?
そうです。普段ならこの路線、淡路島を走り抜ける途中の室津パーキングエリアで小休止を取るんです。そこからは一面の大海原が見えるはずなんです。時間も時間ですから、うまくすれば夕陽にきらめく播磨灘なんてのも拝めたかもしれないんです。
そこを素通り……素通りって……思い出しました! 上り便はどれも停車・小休止を取るんですが、下り便の一部・JR西日本バスの運行便だけは、休憩を取らずにノンストップで高松に向かうんでした。そしてこのバスは――
JR西日本。
迂闊だぁ~! あまりにも迂闊だ。もし他の便なら、休憩の合間に写真を一枚パチリとやって、僕のブログをご覧になってる皆さんに、風光明媚な瀬戸内の夕暮れなんてのをお目にかける事ができたのに。
それどころか、明石大橋や大鳴門橋を渡る光景すら写せずに、バスはホラ、もう鳴門の料金所を過ぎてる。後はトンネル1個通り過ぎりゃ、もうそこは香川県だ。
あはは。寝てる間に帰ってきちゃったよ。
そしてこの時間! 到着予定よりもかなり早い。高松駅前到着の予定が17:44なのに、時計はまだ夕方5時をまわったばかりだ。そして、ここからどう頑張っても20分そこそこで着いてしまう。
――となると、高松駅前の到着予定時刻は……17:20? タイムリミットまで40分もあるじゃないかぁ!
僕がこの便を選んだのは、高松到着が18時に一番近いからで、残時間が15分ならまぁゴールでもいいかな、市内で渋滞に巻き込まれてもギリギリ届くんじゃないかな、と思ったからで……40分も余っちゃっちゃあ……ねぇ?
時間が余るとわかると、人間おかしなもので、何とか何処かへ移動できないものかと模索するんですね。慌てて時刻表をめくる。徳島県はたった今通過してきたから向かう必要はない。高知県に向かうには案外時間がかかるし接続が悪い。向かうとすれば愛媛県、香川県に一番近い川之江だ。川之江まで40分以内で往復。40分で往復って事は片道20分で……ダメだ! 間に合わねぇ! 20分じゃ、坂出の先・多度津までしか行けねぇ!

……投了です……
ボ―――ゼン。


17:24 高松駅前バスターミナル到着
……着いちゃったよ。
キッチリ20分巻きで。
渋滞とか道路事情で遅れる事はあっても……巻くってか……
そして。
この時間で到着って事は、この時点で陣取り合戦終了という訳で。

……はぁ。
すっかり気が抜けてしまって、他人の目もはばからず、その場にペタンとへたり込む。へたり込んでると、体が自然と前後左右に揺れ出す。
……マズいよぉ。長旅後遺症だよぉ。三半規管ヤラれちゃってるよぉ。これ、旅疲れってより自律神経麻痺ですよ。だって立てないもん。「よっこいしょ」の掛け声だけは勇ましく、体は前に手をつくのが精一杯だもの。
ダメだよぉ。乗り過ぎだよぉ。さすがにケツの肉がボロボロ取れる夢は見なかったけど、この45時間のうち移動しなかった時間って10時間くらい――あ、結構止まってんな。
それでも、人間ってここまで壊れるんだねぇ。何かの実験みてぇ。

総獲得ポイント93,700。
うん。頑張ったんじゃねぇか? 初日に交通手段がなくなって足止めを食らい、2日目の緊急ミッションで実質2時間のペナルティを食らい(食らってばっかりじゃのぉ)、『ムーンライトながら』という刺客にヤラれ……うんうん。善戦じゃないですか。「自分で自分を誉めてあげたい」とは某オリンピック選手の言葉ですけど、本当に心からそう思いますよ。
この3日間、頭に巻き続けたバンダナを外す。
うおっ! あ、頭が……!!
ずっと巻き続けてきたもんだから、頭にその感覚が残ってるんですね。頭皮マッサージをしてみるものの、孫悟空の輪っかよろしく、キューキュー締めつける。うあぁ~、これも後遺症ですかねぇ?
最終報告をアップする為、パソコンを立ち上げる。バッテリー残量5%――
……ギリギリです。人も装備もギリギリです。讃岐屋、かろうじてセーフです。
チョ―――ン。


かくて。
45時間に及ぶ壮大にして過酷な人体実験陣取り合戦は幕を閉じました。
総合ポイント114,800。第3位――僕にしては十分過ぎる成績じゃないでしょうか。
(あ! これで和歌山県4,700ポイントを取っていれば、獲得ポイントでは及ばなくても、総合ポイントでりーまんとらべらーさんの上を行ってたんじゃねぇか?
まぁ、今頃になって気づくあたりが讃岐屋の讃岐屋たる所以なんでしょうけどね)
いやぁ~……45時間でよかったぁ。企画段階では「48時間で」なんて言ってたけど、それが採用されなくてよかったぁ。これをあと3時間やれと云われたら……
「45時間も48時間も同じじゃん。あと3時間くらい出来ないかい?」
バカ言うんでない! これが精一杯だって! 角ディレクター、大英断でしたね。
思いましたね。〝旅の達人〟にはなれても〝旅のプロ〟にはなれないんだなぁ――と。
『どうでしょう班』、スゲェなぁ……。一般人はマネしちゃいけないんですねぇ。

トラックバック・オーライ第2弾企画『日本列島陣取り合戦の旅』
僕の心に――いや、おそらく参加した〝陣取り戦士〟の皆の心に、両手で抱えきれないだけの思い出と、両手で支えきれないだけの疲労感を残してくれたものと思います。
また同じような企画が持ち上がって、参加を求められた時は……う~ん、考えちゃうなぁ。やっぱり部外者面して、外からワーワー言ってるのが気楽でいいなぁ。
まぁ、たぶん我らがヴァーリトゥード角Dは、ニコヤカにこう言うでしょうね。
「大丈夫です。もうエントリーは済ませましたから」
(〝陣取り戦士〟の皆さぁん! もう一度参加票を読み直して下さぁい! ホラ、契約期間は「平成20年」までですよぉ)


旅の模様をコチラのアルバムで紹介してますよぉ。
あ。後遺症ですか? もう一週間も経ちましたからね。体の揺れはなくなりましたよ。
頭の締めつけは、まだ残ってますけど(爆)





この記事へのコメント

2005年09月14日 01:28
本当ですね・・・・。讃岐屋さんTOPだったかも知れませんね!
紙一重ですねぇ~。
参加票の期限”平成20年”の部分、よく発見されましたねぇ。
くけくけくけ。
讃岐屋
2005年09月14日 02:53
>りーまん様
ムダな余裕という話もありますがね。でもまぁ、このムダのお蔭で、大崩壊を免れたのかもしれません。人間、大事なのは余裕ネ。

>TBA角ディレクター様
あ。やっぱり何かたくらんでるんだ(笑) 3年の年季奉公、早く明けないかしら(爆)
2005年09月14日 04:58
讃岐屋さん、契約の自動延長とか、ありませんでした?延長しない場合には3年前に予告すること、とか。あるいは平成20年と思ったら2020年だったとか。
讃岐屋
2005年09月14日 05:35
ないないない! あってたまるもんですか!!
旅の途中で死ぬのは、西村京太郎の小説の中だけで十分です(笑) 十津川警部のお手を煩わせたくないです。

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