讃岐屋のらり旅 2005・夏 ―福山篇・その2―

画像≪福山文化ワールド≫


さて、福山城広場から西に下りますと、右手に美術館、左手に県立歴史博物館があります。
ん? 県立歴史博物館? ちょっと違和感。
県外者のイメージとして、「広島の歴史なんだから、建てるんなら広島だろう」と思うんですが……中に入って納得しました。何でもこの福山には、平安末期から室町時代にかけて繁栄した、「草戸千軒」と呼ばれる中世都市があったそうで、聞けばナルホド、広島の歴史を紹介するに相ふさわしい場所なのですよ。言ってしまえば、中世までの広島県の中心は、厳島神社を中心とする宮島の門前町と、「草戸千軒」のあった福山という訳です。
で、この歴史博物館。その「草戸千軒」を中心に、瀬戸内の歴史を紹介しています。入館料290円。
石器・縄文の時代から昭和に至るまでの瀬戸内沿岸都市の発展を紹介したコーナーや、実際に土器に触れる事の出来る(本物? レプリカ?)遺跡出土品展示コーナーなんかもありますが、やはりメインは、中世の都市遺跡「草戸千軒」を復元したコーナーでしょう。このコーナーだけ写真撮影が許可されています。
遺跡というと、どうしても飛鳥時代とか奈良・平安時代のものしか頭に浮かばず、中世の都市遺跡というのは非常に珍しいものじゃないでしょうか。中世の時代にしても、貴族・武士のではなく、庶民の暮らしぶりがわかる遺跡というのは大変興味深いです。
初夏の黄昏時を設定したこの復元モデルは、地蔵菩薩を奉った御堂を軸に、職人の家が建ち並び、船着場に面した市の模様に至るまで、当時の庶民生活の息吹というものを感じ取れるんじゃないでしょうか。当時の食生活というものを、僕はもっと質素なものを想像していたのですが、なかなかどうして、魚は豊富だし、精進料理に近いものまでありました。何より驚いたのは、使われていた食器が漆塗りだった事。もっと木地丸出しの食器かと思いきや、丹念に漆が塗り込まれ、鳥や草木の模様まで装飾されていました。これは、都市形成の一翼を担った職人達の活躍によるものでしょう。
「おぉい、塗師屋さん。こいつにチョチョイと漆を塗ってくんな。お代は弾むからさぁ」
「お安い御用でさぁ。近所の誼だ、銭なんか受け取れねぇよ」
なぁんて会話もあったんでしょうか。
何時間いても飽きないコーナーです――何時間もいたら飽きるか(笑)

画像美術館の脇を抜けて少し行くと、ふくやま文学館があります。
ここでは、「山椒魚」「黒い雨」などで有名な井伏鱒二を中心に、福山とその近隣に縁の深い作家たちを紹介しています。入館料300円。
時節柄なんでしょうか、学芸員の方が大勢の人たちの前で、「黒い雨」と広島原爆について解説なさってました。展示物をじっくり見たかったのですが、とてもそういった雰囲気じゃないので、そそくさと2階へ。
2階は、井伏鱒二の生涯とその作品群を紹介するコーナー。晩年の書斎風景が展示されており、近代文学の雄の人となりに触れる事が出来ます。興味深かったのは、学校の教科書なんかで一度は目にした事のある「山椒魚」のラストが、3パターンも存在してる事。教科書に載ってるのはパターン2(山椒魚と蛙が和解する)で、他に蛙がまったく出て来ないパターン、蛙と和解出来ずに終わるパターンがあります。改稿したとかじゃなく、そのいずれもが存在する、いわばマルチエンディングだったんですねぇ――マルチと呼ぶには3パターンしかないですけど。発表当時は賛否両論あったようですが、妥協を許さない文学家としての頑固な気質の現われ、といったところでしょうか。

画像文学館の隣には、人権平和資料館が建っています。入館料100円。
関東の人には馴染みが薄いのかもしれませんが、西日本ではかつて政治的・風習的に被差別部落というのが存在していて、出身の人は、部落が解消された今でも、いわれなき差別を受け続けています。いわゆる「同和問題」というヤツです。
資料館では、〝人権部門〟で、この「同和問題」の実態を紹介し、すべての人にとって守られなくてはならない基本的人権というものにスポットを当てています。
一方、〝平和部門〟では昭和20年8月8日夜にあった福山大空襲について紹介され、不戦の誓いを新たにするものです。
観光スポットと呼ぶにはそぐわないかもしれませんが、平和・人権について今一度考えてみるいい機会になるのではないでしょうか。


ぐるりと福山城公園文化ゾーンを巡って参りましたが(写真はこちら)、旅のお話はもうちょっと続きます。だって、昼飯もまだだし(笑)

……続くって事でかまいませんよね?
……いいの! 続くの!! ちゃんと付いてらっしゃい(笑)

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